その日、私は疲れていた。
仕事を終えて自転車での帰り道、私が考えていたのはただ一つ。
(お風呂に入りたい…)
私は、お風呂が好きだ。
【一番幸せな時っていつ?】と聞かれたら、
「仕事終わりに家に帰って、子どものつるっつるのお尻を愛でながら風呂に浸かっている時」
と即答できる(変態)。
家に帰り、お風呂の給湯ボタンを押して、お湯が溜まるのを待つ。
その間に自分の荷物を片付けたり、夕飯の支度をする。
ほどなくして長男が遊びから帰宅し、続けて保育園の次男を連れた旦那が帰ってきた。
どうやら旦那も今日は疲れているらしい。
夕方に歯医者に行く約束をしていたのに、準備もせずにギリギリに帰ってきて、歯も磨いていなかった長男がひどく叱られていた。
普段子どもにはそんなに声を荒立てない旦那だが、今日は明らかにいらだちを長男にぶつけているのが感じとれた。
私は旦那から次男を引き取り、二人を歯医者に送り出す。
お兄ちゃんの大怒られを見送って、「おなかすいた~」とのんきに言う次男にバナナを渡しながらつい、私は意地悪なことを言う。
「今日のおとーちゃんはコワいよ~…
(次男)くんも良い子にしてないと、おにーちゃんみたいに怒られちゃうかもよ~」
「(次男)くん、イイコだからダイジョウブだもんっ!」
もくもくとバナナを食べながら次男は答える。
ピンポロ♪ピンポロ♪ピロポロローン♪
「オフロガ ワキマシタ」
次男を促していそいそと浴室へ向かう。私は早くお風呂に入りたいのだ。
お風呂のお供はバスクリン。

いつもはシュワシュワのバブがお気に入り。
だけど、たまには違う香りや色を味わいたくて、以前何かの景品でもらって気に入った【日本の名湯】シリーズを買ってきた。
今日のチョイスは…【道後温泉】。
粉が湯船にふわっと拡がる。
道後温泉というよりも、南国の海のような鮮やかなブルーのお風呂が完成。
バブの香りは『○○の香り』ってわかりやすいけど、バスクリンは『爽やかな香り』となんとも抽象的な表現だ。
良い香りだけど、色同様に温泉らしさは全く感じられない。
シャワーで身体を一通り流し、湯船に浸かる。
「う゛ぇぇぇ~…」とおっさんのような声が出る。
次男は、いつもと違う色合いと香りのお風呂が楽しいらしい。
おもちゃ代わりのプリンカップと発砲スチロールのトレイに青いお湯をすくい、ジュース屋さんごっこを始める。
BGMは最近覚えたての童謡【こぶたぬきつねこ】。
「こーぶたっ♪た~ぬきっ♪きつねっ♪ねーこっ♪」
歌いながら揺れるつるつるでプリップリのお尻を見ながら、私の身体の疲れはホロホロとはがれていく。
湯船に次男を残して、髪を洗う。
シャワーで泡を流しながら私はふと、また意地悪なことを考えてしまう。
…
…
「ねえ、(次男)くん…
おとーちゃんとおかーちゃん、どっちが好き?」
悪魔の質問が思わず口から出てしまった。
次男の歌声が止まった。
私は答えを待った。
…
次男はふたたび
「こーぶたっ♪た~ぬきっ♪きつねっ♪ねーこっ…」と歌い出した。
…あれ?
質問をした瞬間、たしかに歌が止まって、次男は一瞬きょとんとした顔をした。
絶対、次男に私の質問は聞こえていたはずだ。
なぜ無視された…?なぜ答えない…?
そう思ったと同時に私は、次男にどんな答えを求めていた…?
今日は明らかに旦那の機嫌が悪かった。
次男もそれをみていた。
私も疲れていたから、そんな旦那のあからさまな態度に嫌気がさしていた。
(疲れてるのはお互い様やろ、子どもにあたるなよ。)
とも、思っていた。
今、この瞬間なら
「おかーちゃんが好き」と言ってもらえるとでも思った?
それでわずかながらでも、自分の精神的な疲れを癒そうと思った?
そんな自分がすごくイヤになった。
次男も、3歳ながら本能的に【グモンだ…】と感じたのかもしれない。
次男にスルーされたならしょうがない。
むしろ、スルーしてくれてよかったのかもしれない。
なし!今のナシ!ごめんよ次男。
そう思い直した時に、歌をひとしきり歌った次男が声をかけてきた。
「おかーちゃん…
さっきいったの、もういっかいきいて?」
「え?」
「おかーちゃん、さっききいたでしょ?もっかいきいて?」
一旦恥じた質問をもう一度することに、年甲斐もなくモジモジしてしまう。
「…(次男)くんは…おとーちゃんとおかーちゃん、どっちが好き…?」
「あのねぇ…
…
どっちもすき。どっちもだいすき。
とーちゃんもかーちゃんも、(長男)くんも、じーちゃんも、みんなすき。」
そう言って、次男はニコぉーっと笑った。
…
やっぱり、聞こえてたんやん!
歌の切れ目が悪かったのかな?いや、次男は最初から歌い直していた。
次男は、あの少しの時間で3歳の小さい頭をフル回転させたのかもしれない。
今、この質問にどう返すのが正解なのか。
質問者(私)が欲しいであろう答え。
後で自分が悪者にならない答え。
一般的な模範解答。
そんなことどうでも良くって、自分の素直な感情。
【こぶたぬきつねこ】を歌いながら次男が導き出した答えは、
おかーちゃんを安心させ、改心させる1000点満点の回答だった。
「そっか~、(次男)くんは、みんな好きかぁ~」私は微笑む。
「うん!」ニコニコの笑顔とプリプリのお尻を揺らしながら、次男は青いお湯をプリンカップに入れて私に飲めと勧めてくる。
渡されたお湯入りカップを
「ごくごく…あーおいしかったでーす。」
と棒読みで言いながら湯船に戻し、グズグズ言わせないスピード感で次男の頭と身体を洗った。
もう一度湯船に浸かり、最後の南国ブルーな道後温泉を堪能する。
やっぱり、お風呂が好きだ。
仕事の疲れも、旦那へのイライラも。
湯船にじんわり溶け出して、シャワーで全部流れていった。
上がる直前に、次男がポソッと聞いてきた。
「おかーちゃんは、(長男)くんと(次男)くん、どっちがスキ…?」
「うーん…」一応悩むふりをする。やっぱり私は意地悪だ。
「そうやなぁ…おかーちゃんはどっちも大好きやで!
(次男)くんも(長男)くんも、おとーちゃんもみんな好き。」
「そっかあ~、おかーちゃんもみんなスキか~」次男が笑う。
「うん。」私も笑う。
さっきと同じやりとりを今度は攻守交代。
3歳児と4○才のおかーちゃん。
どっちも同じ答えやったけど、レスポンスが早かった分だけ
私の方が成長してると思いたいな。
バブもいいけど、バスクリンも良いよね
コレは、去年の11月の話。1月生まれの次男がまだ3歳の頃のお話です。
以前の記事でお話ししたのですが、ノリこ家は基本バブが大好きです。
ですが、香りや色で変化を楽しみたいときは他の入浴剤を使うことも。
今回は、バスクリンの【日本の名湯】シリーズ。
「絶対に名湯そんな色ちゃうやろ!」といいたくなるような鮮やかな色のラインナップと
「絶対に名湯そんな香りせぇへんやろ!」とツッコミたくなる爽やかな香り達が特徴です。
また、本編の中には全く登場していませんが、ファイテン信者の旦那がときどき買ってくる
【ふぁいてんの湯】も我が家では定番の入浴剤。

入浴剤にしてはちょーっとお高めなので、子ども達が入れるときはおとーちゃんにお伺いを立てます(笑)
長男とはもうお風呂に入ることもほとんどなくなったけど、しばらくは次男のつるつるお尻(変態)と入浴剤達に日々の疲れを癒やしてもらうつもりです。
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